日本の森のようちえん

日本の森のようちえんについて-2

日本の森のようちえんについて-2

日本で森のようちえんという言葉が使われ始めたのは、1995年に出版された石亀泰郎著「さあ森のようちえんへ」によってデンマークの森の幼稚園が日本に伝えられてからのようだ。

しかし、森のようちえんという言葉を使う以前から、「青空保育」「おさんぽ会」という取り組みはあり、さらにそれは母親たちの願いによって自主的に行われていたというところが、現在の日本の森のようちえんの原点のように思える。

2005年に宮城県くりこま高原にて第1回森のようちえん全国交流フォーラムを開催してから、野外教育・環境教育の分野で耳にする機会が増え、森のようちえんを立ち上げる仲間が増え、今では、全国の都道府県に一つは存在するくらいの社会的認知度を得てきた。

森のようちえんという言葉は、デンマークから伝わってきているが、日本の森のようちえんは、日本のそれぞれの地域性を生かして日本独自の森のようちえんを作ってきているように思う。世界の森のようちえんと決定的に違うところは、日本の自然を生かした伝統文化や地域食にかかわる里山文化が多く組み込まれていることだ。森のようちえんのフィールドを森だけではなく、田んぼや畑にまで及び、農的な活動や文化が各地域で違い、生活色が色濃く出ている。これは、自然への畏敬の念と言われるような潜在的な日本の自然のとらえ方や関わり方がつくる特色だと思う。

また、デンマークの森のようちえんや他国の森のようちえんの始まりの多くがそうだったように、日本でも母親たちの願いによって青空保育などの取り組みがあったことから、森のようちえんも母親たちの自主的な運営によるものも多くある。他国では、国が認める幼児教育・保育となってきた歴史的背景から、今ではほとんどが母親たちの手から離れ、指導者が関わる専門性を伴ったものとなってきているが、日本はまだまだ国が認める公教育・保育となりえていないため、母親たちの自主的なサークルの数が多い。

また野外教育・環境教育の分野で注目され始めた経緯から、自然学校と呼ばれる自然体験を推進する民間団体による週末開催型の森のようちえんが多いことも特徴だ。母親たちの自主的な活動と男性が得意とする野外教育のエキスパートたちがつながりを持ったことで、組織としての全国に発信する歯車が大きくなったことも普及啓発が進んだ要因といえるだろう。

分類項運営者活動頻度参加形態対象
週末開催型野外活動団体
自然学校
休日任意回宿泊も伴うこともあるので、親子参加が多い人数 それぞれ
2歳から小学低学年
自主保育型母親週1-毎日・子育て広場で親同伴
・3歳児以上になると預かり合い
0歳児―5歳児
共同保育型保育士と保護者の共同組織ほぼ毎日子どものみの預かり
※保護者もスタッフとして当番で参加する日もある
2-5歳児
?30名程度
主宰者型保育士個人(主宰者)ほぼ毎日子どものみの預かり2-5歳児
 ?50名程度
認可施設型認可幼稚園
保育園
※自然学校から指導者を招いて開催しているケースも増えている
年間の行事に取り入れて開催・頻度の多い園では、園児のみ
・大きな行事で親子で参加を募って開催している園もある
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こうして2005年からの小さな仲間の集まりだった全国フォーラムも、今(2015年現在)では毎回400名を超える参加者が集うまでとなっている。子育てが難しい現代社会の仕組みや子どもたちや家庭の在り方の多様さへの対応に、行き詰まりを見せている教育の現場からも森のようちえんという“子どもと自然”をキーワードを持った新しい可能性に、期待が高まっている。

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