スタッフ募集

「子ども中心」をやめたら、子どもが変わった。——馬と共に子どもの成長を支える、三陸駒舎のスタッフ募集

2026年8月27日

「子ども中心」をやめたら、子どもが変わった。

——馬と共に子どもの成長を支える、三陸駒舎のスタッフ募集

一般社団法人三陸駒舎は、岩手県釜石市の山あいで、馬と共にある暮らしの場を提供しています。「一人一人が様々な困難を乗り越えるための生きのびる力を育み」「心豊かに過ごすことのできる持続可能な社会の実現に貢献する」ことを目的に掲げています。三陸駒舎はこの目的のもと、地域の馬文化の再生と古民家の活用、被災地の子どものケア、ホースセラピーを取り入れた障がい児支援、馬と地域資源を掛け合わせた新たな仕事づくりという、4つの事業に取り組んでいます。現在は、毎月延べ200名以上の子ども達がここに通っています。

馬に負けた日

私がこの活動を始めたきっかけは、東日本大震災で被災した子ども達との出会いでした。当時、私は復興支援員制度「釜援隊」の一員として釜石市に入り、仮設住宅で子ども達と関わっていました。感情を抑え込み、大人の顔色をうかがいながら日々を過ごす子ども達を前に、正直、自分の無力さを感じることが少なくありませんでした。

ある日、その仮設住宅に馬を連れていきました。子ども達は馬と出会った瞬間から、それまでとは見違えるほど元気な姿を見せ始めました。十年以上、子どもの育成に関わってきた私にとって、この光景は「馬に負けた」と感じるほどの出来事でした。子ども達の心の復興は、人間が携わるよりも、馬に委ねたほうがいい。そう確信したのが、すべての始まりです。

地域の記憶をつなぐ馬

あの場にいたのは、子ども達だけではありませんでした。馬が仮設住宅に現れたとき、周りにいたお年寄りたちは誰も驚くことなく「懐かしいねぇ」と声をかけ、かつて馬耕や馬搬で馬と共に暮らしていた頃の記憶を、次々と語ってくれました。かつて釜石一帯では、馬の背に炭俵や薪を積んで山道を運び、田畑を耕す際にも馬の力を借りていました。馬搬や馬耕という形で受け継がれてきたその記憶は、地域の年配の方々の中に、今も確かに残っています。震災という大きな出来事の中で、馬の存在が、失われかけていた地域の記憶と文化を呼び覚ますきっかけにもなったのです。馬がそこにいるだけで、子どもも大人も元気を取り戻していく。この光景を見て、私は馬との暮らしをもう一度この土地に取り戻そうと決めました。

馬を先生にする

三陸駒舎の活動は、「子ども中心」ではなく「馬中心」で動いています。人間が中心になると、どうしても関わる大人の価値観が表れ、子どもをその枠の中に押し込めてしまう危険があります。馬を先生にすることで、子どもは大人の手を離れ、本来持っていた方向へ、自分のペースで育っていく。これは、子どもの主体性を大切にする森のようちえんの実践と、根っこの部分で重なる考え方だと思っています。私たちはただ、その回路を人間ではなく馬に委ねているだけなのです。

この「馬中心」を支えているのが、アフォーダンスという考え方です。頭で考える前に、身体が環境に反応して動く。馬という生き物と共にある環境そのものが、子どもの育ちを引き出す仕掛けになっている。人と自然の中間に位置する馬と関わることで、様々な困難を乗り越え、生きのびる力を養うことができると、私たちは考えています。

馬と共に働くというのは、馬に指示を出す側に立つことではありません。馬の呼吸やリズムに耳を澄ませながら、その流れの中に自分を置いていく。能動でも受動でもない、いわば「中動態」的な関わり方です。毎朝の馬房の掃除や餌やりといった地味な繰り返しの中で、スタッフ自身もこの感覚を少しずつ身につけていきます。決まった手順をこなすというより、馬の状態に応じて自分の動きを調整していく。この感覚が、子どもと向き合うときの土台にもなっています。

森のようちえんに関わる方々は、日々の実践の中で、この感覚に近いものをすでにご存知かもしれません。大人が先回りして教えるのではなく、環境そのものが子どもの育ちを引き出していく。三陸駒舎は、その環境の中心に人ではなく馬を置いているというだけで、目指している方向は、案外近いところにあるのではないかと思っています。

身体が知っていること

三陸駒舎のホースセラピーは、この考え方に加えて、感覚統合理論をベースに組み立てています。馬との関わりの中で、五感に加えて固有受容覚や前庭覚といった感覚情報を得ることで、脳が感覚を整理し、まとめる力を高めていきます。それによって、必要な感覚を調整して注意を向けられるようになったり、適切なコミュニケーションが取れるようになるなど、子どもの健全な発達を促していきます。落ち着きがなかった子が、馬の背に揺られているうちに自然と姿勢が整い、こちらの声かけに集中して耳を傾けられるようになる。そうした変化を、これまで数えきれないほど目にしてきました。

言葉によらない変化

数年前、不登校の中学生の女の子が、片道2時間かけて三陸駒舎に通ってきていました。動物が好きな彼女は、ある日、馬と一緒に歩く「引き馬」をしていました。うつむき加減で自信なさげに歩く彼女に、馬もトボトボと重い足取りで付いていきます。スタッフが「胸を張って元気よく歩いてみて」と声をかけると、彼女は身体の使い方を変え、歩調を少し早めました。すると馬の足取りが軽やかになり、彼女の横にスーッと付いて歩き始めたのです。彼女はその変化を受け取り、表情がぱぁっと明るくなりました。最初は身体の形を変えただけでした。それが馬の歩き方を変え、彼女の気持ちにまで変化をもたらしていったのです。その後、彼女の利用頻度は少しずつ減っていき、学校に復帰したという連絡が届きました。言葉で説得したり、頑張れと励ましたりしたわけではありません。身体と身体のやり取りの中で、変化は静かに起きていました。

横の関係が生まれる場所

2017年12月、私たちは障がい児を対象にした発達支援の受け入れを始めました。その第一号の登録者が、隣町・大槌町の佐竹惇希さんです。利用を始めた当初は一人での利用でしたが、次第に他の子ども達が加わると、声をかけながら一緒に馬の世話をしたり、遊んだりする姿が見られるようになりました。その様子をお母さんに伝えると、「えっ、惇希が他の子と遊ぶんですか」と驚かれました。惇希さんには自閉症があり、お母さんの中には、みんなと一緒に遊んだり、仲間の輪に入ったりすることは難しいというイメージがあったといいます。それでも、「ここに来ると、そういう障害があるのを忘れます」と話してくださいました。

馬は、人を障がいの有無や役職の高低といったカテゴリーで見ることがありません。馬を中心に据えることで、そこにいる人や動物、周りの自然が、上下ではなく横の関係で結ばれていく。惇希さんの姿は、その一つの証だったと思います。

震災から10年以上が経った今も、岩手沿岸ではケアの必要な子どもが8人に1人いると報告されています。もっと多くの子どもに、この場を届けたい。そのために、共に働く仲間を探しています。現場経験は問いません。馬や自然が好きで、子どもの支援に関心のある方であれば、経験よりもやる気を大切にしたいと考えています。必要な資格は普通免許だけです。保育士や児童指導員任用資格、障がい福祉サービスの経験がある方は歓迎しますが、必須ではありません。

次回は、この活動をどうやって立ち上げてきたか、収入のあてもなく始まった具体的な歩みについてお話しします。

募集要項・応募方法はこちらからご覧ください。

https://kamakoma.org/recruit202606/

(一次締切:2026年9月末日)