アリス・ウォータース氏の訪問を受け、有機農家さんを支える学校として新たな一歩を踏み出した「森の学校 みっけ」。食スタッフを新規募集します。
NPO法人化した、オルタナティブスクール「森の学校 みっけ」は、「食べる」をとても大事に考えている学校です。1970年代から有機且つ地産地食の考えを呼びかけ「美味しい革命」を世界に起こしたアリス・ウォーター氏の考えに賛同する人が多く集う学校でもあります。
アリスは先月(2023年10月)、みっけのフィールドを訪問。みっけは、彼女から大きなインスピレーションを受けて、小さくて大きな一歩を踏み出すことを決めました。
<撮影: 植田彰弘>
アリスが提唱する”学校支援型農業(SSA)”=農家さんを支える学校として、町内の有機栽培に取り組む農家さんを支えることにしたのです。 一歩を歩み始めると同時に、子どもたちの心身両面、学びを支える「食スタッフ」を新たに1人、迎えることにしました。(※求人応募要項は下部に記載しています)
<撮影: 植田彰弘>
改めてここで、みっけの説明をしておきましょう。森の学校みっけは小学校1~6年生を対象とした週5日制、無認可のオルタナティブスクール。2022年4月開校、2023年3月にNPO法人化しています。
みっけの大人たちは、教師・先生ではなく「スタッフ」と呼ばれます。みっけには、子どものフィールド活動に寄り添うスタッフのほか、焚き火や薪ストーブなどでランチを作る「食のスタッフ」がいます。食のスタッフも調理だけではなく、料理を通じて子どもの心身、学びに寄り添う大事な役割を担っています。
アリスはNPO法人まちの食農教育による「School Food Forum2023 ―地域でつなぐ農と食―」でスピーチをした後、みっけフィールドを訪問してくれました。実はみっけとアリスは深い関係にあります。みっけ代表の松岡美緒は、アリスの「Edible Schoolyard(食べられる校庭)」元研修生(2018年)。松岡の学びは、大事な土台になっています。
同時に、松岡のパートナーで、アーティスト、料理人でもあるジェローム・ワーグは、アリスのお店「シェ・パニーズ」の元総料理長。「シンプル・フード」を日本全体に広めるべく、神山と東京を行き来しています。
<子どもたちがアリスやゲストのみなさんに「みっけ」の説明をしているところ>
10月のある日、アリスはゆっくりとフィールドへの坂を降りて、みっけの小学生たちから今まで行ってきたジビエなどを使った食の活動を紹介してもらったり、子どもが作った焼き芋を頬張って、笑顔に。「ここは、シンプル・フードを実現する、美しい場所ですね」という言葉に、松岡をはじめスタッフ一同、改めて自分たちの学校に自信をもらったのです。
<アリス・ウォータース氏の最新刊。『スローフード宣言――食べることは生きること』2022年出版>
アリスの訪問前、改めてアリスの著作の読書会をする中で、食のスタッフたちも、気づきを得ていました。
あるスタッフは「いままでみっけで大事にしてきた”美しく盛り付けること”、”(買うのではなく)手で作ること”、”季節のものを思い切り楽しむこと”、”地球を大切にしながら作ること”。自分が当たり前に大事にしてきたことが、アリスの言葉を聞いて、とても価値のあることだと気づけた」とも話していました。
さて、そんな、みっけの食スタッフをめぐる、みっけの子どもたち、と学びについて、聞いてみましょう!守田瑠衣、上田麻衣に加えて、代表松岡の3人が語ります。
みっけやアリスに興味のある方はもちろん、食を仕事にしている方/仕事にしたい方はぜひ読んでみてください。
<左から食スタッフの上田、守田、代表松岡>
<食堂のメニューも子どもたちが書く 撮影: 植田彰弘>
まず、食スタッフの中心的な動きとなる”給食”について教えてください。献立表はあるんですか?
上田:メニューから買ってくるものを決めるのではなく、目の前にある、季節の食材から生み出すのが、自然な形。だからみっけの給食には献立表はありません。
昨日は、地元の人がお昼前に鹿肉を届けてくれたので、急遽一品「鹿肉のロースト」を増やすことにしました。どう調理するかすぐ考えて、じっくりと焚き火で低温で焼いて、蒸気で加熱。塩だけで食べたんです。塩は、子ども達が海水から作った塩です。
<急遽、給食に加わった一品。低温でじっくり焼いた、鹿肉のロースト>
子どもたちがフィールドから採ってきてくれるものもあります。例えば今日の給食は、子どもたちがフィールドでベニバナボロギクを摘んできてくれたから急遽、かきあげに入れました。
松岡:フィールドには季節の果物の木や草花がいっぱい生えていて、子どもたちも食スタッフも採取します。主に採取できるのはミツバ、セリ、ビワ、アケビ、クリ。キクラゲも自然薯も生えています。キクラゲは「明日のほうが大きくなるから、待とう」って採るのを止める子も。自然薯は、畑に生えていたものをフィールドに植え替えました。卒業まで育てたいって。
とても美味しそう。いただきもの、自然の恵み、自分たちで作った調味料も給食に生かされるんですね。
守田:普段の給食食材の買い物の中でも、「季節のものを食べる」ということは最も大事なベースにありますね。なるべくお野菜は、神山産、徳島産。醤油など調味料も徳島産を使っています。なるべくシンプルなものを使い、調理もシンプルにすることを心がけています。お米も、近所の農家さんのところで買わせてもらっています。
<学校が農家を支える「SSA」先として契約する「やさいのちえ」さんから届いた間引きにんじん。早速天ぷらに>
守田:農家さんへのご挨拶や購入は、子どもたちと一緒。食スタッフと子どもたちは、一緒に農家さんのところへ行き、お米を譲ってもらいます。それから精米所へ行って、精米するところも、子どもたちは自分たちの手を使ってやっていきます。
去年は、子どもたちの中から「みっけはごみを出さないで楽しく過ごせる場所だね」という言葉が出てきました。しかしみっけで一番にゴミが出る場所がキッチンだと知らされます。「できるだけ、ゴミを出さないようにしたい」とかまパン&ストア(フードハブ・プロジェクト)に行く時は、小麦やお砂糖の量り売りを買いに行きます。
給食をつくるプロセス全てが子どもたちの学びにもつながるんですね。
上田:子どもがつくる「子どもキッチンの日」というのがあります。先日は、子どもたちが、モクズガニでお出汁をとる高知の郷土料理ツガニ(藻屑ガニ)うどんを作りました。その前の3週間ほど、フィールドの川でモクズガニを獲りたい思いにかられた男子数人がいて、たくさんカニを集めたんですね。しばらく飼っていたカニを食べることになった日の朝、輪になって話す時間に、「飼っていたカニだから、私は食べることに対して、ちょっと複雑な気持ち」とスタッフがそっとシェアしてくれたんです。この時、意外と子どもたちは「たのしみ」という意見だったんですが…。
実際、出汁を取るためにカニを潰している時、子どもたちの中から自然と「カニさん、カニさん、ありがとう」という歌とリズムが生まれてきた。1回締めて潰す過程だったんですが「ありがとう、いただきます」と1人が最初に言い出したら、みんなが言い始めたんですね。
<モズクガニを締める子ども>
<うどんの麺を作るチームは、小麦粉と塩、水の割合を計算。ここに算数の学び>
<子どもたちが作り上げたこの日の給食。食スタッフたちは調理プロセスの失敗も成功も柔軟に見守る>
松岡:その後、「モズクガニ、美味しかったからまた食べたい、また獲ろう」という子がいました。「絶滅するからやめて!」という子が出てきて。「命は、無限じゃない」ということを体験から考えられるようになっています。小さいカニは獲れても川に返す、というようなことも当たり前のようにやっています。
上田:「スーパーでも、切り身を当たり前に買う中で、命を体験できるのが嬉しい」という意見がスタッフからも出てきていました。猟師の資格を持ったスタッフがいるんですが、フィールドでいただいた鹿を捌いている時に、子どもたちは臓器を観察していました。「肺ってこんなに軽いんや」という声も。今の時代は、命を感じる機会がない子がたくさんいるから、鹿という「生き物」が、「お肉」に変わる瞬間を知ることができるのは、貴重だと思います。解体したその日に給食に出したけれど、わたしが調理する横で観察している子が何人もいました。
教科書のない学校ならでは。理科の知識も知恵も、実地の中で自然と身についていくんですね。
松岡:フィールドの学びの中でも特に「食」は、教科横断型の学びを支えてくれていると思います。「理科」「文化人類学」「道徳」「歴史」。食は、いろいろな要素を教えてくれます。この間、鳴門の渦潮を見に行った時の展開も面白かったんです。
上田:「塩は、海水からできている」という話から、「地球の土地全体が塩を含んでいる土地だよ、だから川から流れ出た水が集まった海が、塩水になる」という話をして。
松岡:「塩作りたいね」という話に発展して、海水を汲んでフィールドの焚き火で炊いて塩を作りました。瓶には「おれたちの塩」って名前がついてる(笑)。
<炊いた塩はツユクサの花で色付けし、綺麗な青色になった>
守田:塩作りは、「家でもやりたい」という子もいたよね。そこから、「家だと、焚き火じゃなくてガスをつけて炊く?」っていう話になって、「薪を燃やす」と「ガスを燃やす」と、どっちが二酸化炭素を出さない調理法だろう、という話になりました。
「薪だって二酸化炭素出る」と話したのが、1年生。
「ガスはここまでくるまで、二酸化炭素排出してる」と話したのが上の学年。
じゃぁ、「ガスってどういう形で運ばれているのかな?」と考えていった。ガスは産出国からタンクで運ばれて、ガス屋さんのところまで来てと長い旅の間に、二酸化炭素をたくさん排出している。「でも、それでも家でやりたいよね」「火で焚くのと同じ味なのかな?」という話に。
答えのない問いをし続ける。目の前のことから、考える力、学びに繋がっていきますね。最後に、どんな人と働きたいか教えてください。
松岡:マクロビオティックやローフードなど、バックグランドは食のスタッフの間でも違うとは思うけれど、自然が好きな人だったら大丈夫。
上田:芯をもって、子どもたちと関わってくれる人に来てほしいですね。食については、「自分のスキルや経験をシェアしたい」貢献したい気持ちの人と一緒に働きたいと思います。自然の恵みを大事にして繋がっていきたいと考えている人だったら。
守田:柔軟性のある人がいいですね。子どもが焚き火でご飯を炊く日に、「うまく炊けてない!」と子供達が焦っているときも、ゆったり見守れるぐらい。それから、地域の農家さんとも関わりの深い学校だから、地域の人とやりとりする場でもしっかり前に出られる人がいいですね。
<子どもたちが描いたみっけの食で印象的だった今までの体験>
ゼロから始まり、わずか1年半で、みるみるうちに目指す理念を実現している「森の学校 みっけ」。
さて、もしあなたが調理の仕事をしているならば。
「食のスタッフ」に応募してみませんか?フィールドで、地球とともにある食と学びを支える毎日は、ゆったりとした時間が流れているのに、とてもとても、刺激的なはずです。
みっけの給食に関するインスタグラム「みっけ食堂」https://www.instagram.com/mikke.shokudo/
(取材・文/中村明美)
【募集要項】
雇用形態 | 非常勤職員(パート) |
勤務地 | 徳島県名西郡神山町神領南上角257 |
給与 | 時給900円(3ヶ月間の試用期間あり) |
待遇 | 〈保険〉雇用保険、<週4日勤務の場合>労災保険、健康保険、厚生年金保険 〈他〉・活動中の食事支給(半額組織負担) ・みっけ主催のプログラム(森づくり、大地の再生など)の参加費免除 |
勤務時間 | ・勤務時間 8時30分〜16時30分 ・平日週3日、又は週4日(長期休みは休みになる月有り) |
仕事内容 | ・給食調理 |
必要な資格・経歴 /求める人物像 | ・資格:普通自動車免許 |
勤務開始予定 | 2024年3月〜(応相談) |
募集期間 | 2023年11月18日〜採用が決まり次第終了 |
応募について | 応募について以下のフォームよりご応募ください。 |
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